わたしから、プロポーズ
仕事を頑張りたいという気持ちは、私だって同じだ。
結婚を機に、仕事を辞めようとまでは考えていなかった。
ただ、続けようとまで強く思っていたわけでもないけれど。
「ねえ、瞬爾。まだ、きちんと何かを決めたわけじゃないじゃない?だから、プロポーズの事は、会社の人たちにはまだ言わないで欲しいの」
とっさに出た言葉は、それだった。
密かに破局を狙っている女性社員たちに、これみよがしにプロポーズを自慢したっていい。
遥に、明るいニュースを届けられたらいい。
そう思うけれど、この期に及んで私が望む事は、プロポーズをされた事実を隠す事だった。
「あ、ああ。そうだな。莉緒がそう言うなら、まだ話さないでおくよ」
瞬爾は少し不審そうな目を向けたけど、すぐに笑顔に戻した。
ごめんね、瞬爾。
プロポーズは、嬉しくて信じられないくらいで、涙が出たほどだったけど、まだ覚悟がしきれないみたい。
結婚と引き換えに、失うものがあるかもしれない…。
その覚悟が、まだ出来ない。