わたしから、プロポーズ
寿史さんから、ニ課の成績は私と遥の肩にかかっていると言われた言葉が、妙に頭に残っている。
私の為に瞬爾が仕事を頑張る姿は、贅沢なくらいに幸せだ。
でも、どこか虚しく感じるのは、瞬爾との結婚を機に、仕事を失うかもしれない。
それを感じているから。
仕事を続けるにしても、事務職への異動が濃厚だし…。
それならば、無理に続ける意味はない。
だったら潔く、専業主婦になればいいのか。
でも、それを考えると、言葉に出来ない不安が襲ってくるのだった。
「じゃあ、芳川課長いってきます」
得意先周りの為、営業カバンを片手にオフィスを出るところで、瞬爾と目が合った。
今までと変わらない、優しい笑みを向けてくれる。
だけど、なぜだか今日は、その笑顔を無視してしまった。
それは、同じ“ビジネスパーソン”としての、瞬爾への嫉妬からなのかは分からない。
分からないけれど、笑顔を返す事は出来なかった。