わたしから、プロポーズ
『結婚』という現実
昼間、貰った式場のパンフレットたちは、見る事もなく袋ごと家のごみ箱へ捨てた。
見たくないわけじゃないけど、今はそんな気分になれない。
だいたい瞬爾や家族と、まだきちんと話をしていないのだし、見るには早いと思ったのだ。
それに、今は情報誌も溢れるほどある。
何もこのパンフレットを見る必要はない。
そう思って、捨てたのだった。
すっかり着替えも終えて、ゆっくりしているところへ、ようやく瞬爾が帰ってきた。
「あっ、お帰りなさい」
玄関へ出迎えると、ホッとしたような表情で見られてしまった。
「どうかした…?」
私を見て、安心した様な顔をしている。
すると、瞬爾はぎこちない笑顔を浮かべたのだった。
「昼間、莉緒の様子が変だったから。でも良かった。いつもと同じだ」
その言葉に内心、後ろめたさを感じる。
様子が変とは、外周りに行く時に、瞬爾の笑顔を無視した事を言っているのだろう。
まさか、そんなに気にしていたとは思わなかった。
フォローのしようもない私は、ただその場に立ち尽くすだけ。
瞬爾は、そんな私の頭を軽く叩くと、小さな笑顔を向けて部屋へと入って行ったのだった。