わたしから、プロポーズ
瞬爾が私に言ってくれる言葉はどれも、自信になって愛を感じるものばかり。
『莉緒の目は綺麗な二重なんだな』
そう言われて、使うアイシャドーの色やメーカーを吟味する様になった。
『莉緒は色白で足が綺麗』
と言われれば、日焼けをしない様にボディクリームが欠かせない。
それくらいに、瞬爾の言葉は私には影響力があったのだった。
「莉緒、その口紅綺麗ね」
会社の昼休憩、化粧室でメイク直しをしていると、同期の遥(はるか)が声をかけてきた。
遥も同じ営業ウーマンで、スレンダーな美人だ。
黒髪のストレートロングは、後ろで一つに束ねているだけなのに垢抜けている。
「うん。新色なの。最近じゃ、一番私に合う色だなって思って」
鏡で入念にチェックをし、口紅をポーチへしまった。
「本当に伊藤課長とラブラブなんだ?それも、課長好みの色?」
さすが遥は、私の事をよく分かっている。
特に瞬爾に合わせているなんて、一度も話した事がないのに、すっかりお見通しだ。
「う~ん…。好みの色といえば色かな?」
恥ずかしくて誤魔化してみたけれど、まさしく正解。
小さな頃からコンプレックスだった厚い唇も、瞬爾と付き合ってからチャームポイントになったのだった。
だって、瞬爾は言うもの。
キスをする度に、私の唇は柔らかくて、何度もキスをしたくなるって。
だから、常に唇は綺麗に色をつけておく。
瞬爾がキスをしたくなる様に…。