わたしから、プロポーズ
微かに流れるクラシックの音楽。
そして窓ガラスから一望出来る市街地。
そこには、雲一つない青い空が広がっていた。
「まるで、二人の未来みたいじゃない」
瞬爾のお母さんが、目を細めながら機嫌良くそう言った。
すると、私のお母さんも同調するように頷いている。
穏やかな日曜日の昼下がり。
瞬爾がセッティングした食事会で、それぞれの両親が初対面をした。
ここはホテルの最上階にあるフレンチレストランで、落ち着いた雰囲気の上品な店だ。
私を優しく見つめるのは、何度か会った事のある瞬爾のご両親。
お父さんは瞬爾とそっくりで、そのまま歳を重ねたらこんな感じなのだろうと想像出来た。
そして、お母さんは小柄な可愛らしい方。
ストレートのボブスタイルで、スラッとした出で立ちは、お父さんと並ぶと美男美女でお似合いだ。
そのご両親と比べると、私の両親は二人とも、体育会系のサバサバとした夫婦だった。
まあ、実際、二人ともスポーツをしていたわけだけど…。
「本当に縁起がいいよな?なあ、莉緒」
濃いグレーのスーツに身を包んだ瞬爾が、穏やかな笑顔で話しかけてきた。
実は、あのパンフレットの件以来、まともに話しかけられたのは今が初めてだ。