わたしから、プロポーズ
「それじゃあ、莉緒ちゃん。またね」
「瞬爾くん、よろしくお願いしますね」
両親とは、レストランを出てすぐに別れた。
エレベーターまで見送った私たちは、二人きりになりどこか気まずい。
といっても、それを感じているのは、私だけなのかもしれないけれど。
「莉緒の子供の頃の話が聞けて楽しかったよ。けっこう、ヤンチャな女の子だったんだな?」
普段と変わらない様子で、瞬爾は私にそう話かけると、エレベーターのボタンを押す。
さっき、お父さんたちを乗せて降りた後だけに、なかなかやって来そうにない。
エレベーターホールで二人きりの時間が、なぜだか緊張する。
「ヤンチャってほどでもないけど…。でも、今よりは何も考えずに行動していた気がする」
「なるほどなぁ。今よりは…か。だったら、これからは、もう少し肩の力を抜いて欲しいよ」
「肩の力?」
それは、どういう意味だろう。
聞き返した言葉に、瞬爾が返す間もなく、エレベーターの扉が開いた。
当たり前の様に私の手を引き、瞬爾は乗り込む。
そして扉が閉まった瞬間、唇を重ねてきたのだった。