わたしから、プロポーズ
「瞬爾、やめて…。きっと、誰か乗ってくるよ」
かろうじて抵抗するも、お構いなしに唇が塞がれる。
「扉が開く前には、ちゃんとやめるよ」
こんな場所で強引にキスをするなんて、今までの瞬爾からでは考えつかない行動だ。
どうして、こんな事をするのだろう。
そう思いながらも、戸惑う自分と、ときめく自分がいる。
結局、地下駐車場までエレベーターが止まる事はなく、その間私たちは唇を重ね合っていた。
小さく漏れた甘い声。
それは、紛れもなく瞬爾を感じている証拠。
好きだと思う気持ちに変わりはなくて、プロポーズだって嬉しい。
そういう気持ちはあるのに、何かが不安でたまらない。
その理由が何なのか。
分からないまま、気持ちを上げる為に買い込んだのは、大量の結婚情報誌だった。
その中に、数種類のウエディングドレスが紹介されていた。
それを自宅へ戻って眺めていると、瞬爾が覗き込んで言ったのだった。
「莉緒は華やかな方がいい。真っ白よりは、オフホワイトが似合うかもな」
と。
その時の瞬爾の笑顔が、とても満足そうに見えて、私も笑顔を作らざる得なかった。
だけど、心はいまいち乗り切れてないのだった。