わたしから、プロポーズ


顔合わせの日以来、またもや箱の中で眠る指輪。

瞬爾はその指輪を、結納が終わるまでは婚約指輪とは呼ばないと言っていた。

なぜなら、プロポーズはしたけれど、正式な結納をもって、“婚約”が成立するかららしい。

少なくとも瞬爾の中では、そういう定義だった。

だから私たちは、まだ“婚約”をしていないのだ。

そう考えたら、少しだけ心が軽くなった気がする。

「莉緒。綺麗ね、その花。和香子が喜ぶんじゃない?」

遥はブーケ型の花束を見て、笑顔を浮かべた。

「そう思う?それなら良かった。新婚さんの喜ぶ物が分からなくて」

ホッとため息をつくと、遥はニヤリとした。

「じゃあ、今日はいい勉強になるんじゃない?莉緒だって、そう遠くない未来の事だと思うけどなぁ」

プロポーズの話はしていないというのに、遥の指摘はいちいち鋭い。

だけど、私も同じ様な気持ちだ。

和香子に会えば、話しをすれば、少しはこの心のモヤモヤが取れるかもしれない。

念願のプロポーズをされたというのに、どこか乗り切れない気持ちを、吹き飛ばしたいのだった。

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