わたしから、プロポーズ
「あった!和香子の家」
遥はテンション高く小走りで向かうと、インターホンを押した。
「すごい…。一戸建て?」
和香子の新居は、郊外の振興住宅街にある。
まだ造成が終わっていないらしく、奥の方は売地が多数あった。
その中で和香子の新居は、他の家と同じ様にベージュが基調のモダンなものだ。
標札には木製のプレートが使われており、ローマ字で『KASHIGI』と記されている。
玄関先には彩り豊かな花が植えられていて、いかにも幸せそうな家庭といった雰囲気だった。
これが、新婚生活…?
思わず目を奪われていると、遥が囁く様に言ったのだった。
「伊藤課長なら、莉緒をこれ以上立派な家に、住まわせてくれるわよ」
「別に、そんな事を望んでるわけじゃないけど…」
そんなやり取りをしている間に、玄関のドアが開いて和香子が顔を出した。
久しぶりの和香子は、髪が栗色になっていて、ストレートのセミロング姿が、可愛い若奥様の雰囲気を醸し出している。
「いらっしゃい。莉緒も来てくれたなんて嬉しい。どうぞ、入って」
おっとりとした雰囲気はそのままに、笑顔の和香子が部屋へと促したのだった。