わたしから、プロポーズ


そうか。

心のモヤモヤの原因が分かった。

私には、和香子の様にはなれない。

仕事を辞めて一日中、瞬爾の帰りを待ち続けるなんて、とても想像が出来ない。

瞬爾にはもちろん、仕事で活躍して欲しい。

それを支えたい気持ちだってある。

だけど、私は?

今まで、それなりに頑張ってきた。

自分なりのポリシーも持ってきた。

木下部長の様に、可愛がってくれる得意先もある。

それが、結婚をする事で失ってしまうというの?

毎日、瞬爾を待つだけの日々を過ごすだけ…。

それが嫌だったんだ。

それを心の中で、感じていたに違いない。

だから、ずっと心にモヤがかかっていたのだと分かった。

「ねえ、和香子。旦那さんと結婚をする前は、もちろん結婚を夢見たんでしょ?不安は何もなかった?」

私の問いかけに、和香子は一瞬戸惑いの表情を見せたけれど、すぐに笑顔になった。

「無かったよ。だって私にとっての彼は、全てだもの。だから、仕事を辞める事にも未練はなかったし、今が一番幸せ」

その答えに、自分がいかに夢を見ていただけかが分かった。

私は、結婚を何だと思っていたんだろう。

それが、分からなくなってしまった。

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