わたしから、プロポーズ
しばらく和香子の家で過ごした私たちは、夕方には帰る事にした。
休日も仕事である旦那さんの為に、いつも以上に凝った夕飯を作ると聞き、早めに帰る事にしたのだった。
「今日はありがとう。二人に会えて懐かしかった」
和香子は帰り際、私たちに手土産を持たせてくれた。
それは小さな鉢植えだった。
手の平サイズのプラスチックで出来た手作り物で、飾られている花は庭で咲いている花だ。
水に浸されたスポンジが中にあり、そこに差してあるらしい。
「枯れるまで、楽しめると思うから」
にこやかな笑顔を向けられる和香子は、毎日が充実している証拠だ。
「ありがとう…」
こういう事も余裕で出来るのかと思うと、感心する気持ちと、やっぱり自分には出来ないという気持ちの両方がある。
「莉緒、伊藤課長によろしくね。せっかくの休みだったのにありがとう」
「ううん。こっちこそ、ありがとう。それに瞬爾は今日は休日出勤なの。だから、大丈夫よ」
小さく微笑んだ和香子は、手を振って見送ってくれた。
会話もないまま駅までの道を歩いていると、遥が話しかけてきたのだった。
「莉緒、伊藤課長と何かあったの?元気ないし、どこか上の空だったし」
陽が傾きかけた空は、オレンジ色に染まって綺麗だ。
本当なら、清々しい気持ちで見られたかもしれないのに。
「遥、私ね結婚を甘く見てたかも」