わたしから、プロポーズ


遥は、その続きを待つ様に、黙って私を見ている。

「瞬爾が好きだから、自分のものにしたくて仕方なかったのかも。だから結婚も、絶対に切れない絆を作るみたいに思えて…」

そう言うと、遥は小さく微笑んだ。

「初めてじゃない?莉緒が、本音を話すのって」

「え?初めて?」

思わず足が立ち止まる。

すると遥も、合わせるように立ち止まった。

そして、少し意地悪く言ったのだった。

「だって、莉緒って伊藤課長の事は、いつも余裕たっぷりな感じだったじゃない?だけど、私は悩みくらいあると思ってた」

「あ…」

そうだ。

遥にさえ、私は瞬爾に対して余裕がある振る舞いをしていたのだった。

全ては、瞬爾に可愛く優しい女性に映る様に…。

「やっぱり、悩みがあったんだね。伊藤課長を束縛しようと思ってたから、自己嫌悪に陥ってるの?」

「え?いや、そういうのでもないんだけど」

プロポーズをされた事を知らない遥は、私の言葉だけを鵜呑みにしている。

だけど、どうしても言えなかった。

「いいじゃない、それでも。そもそも、恋愛がそうよ。誰だって、相手を束縛したい気持ちがあるものだって。伊藤課長にもあるんじゃない?」

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