わたしから、プロポーズ
「えっ?入籍も3月じゃないの?」
突然出てきた入籍話に、戸惑いを隠せない。
だけど、瞬爾はハンドルを握ったまま、淡々と答えた。
「別に、3月じゃないといけない理由もないだろ?ただ、挙式はみんなの記憶に残るから、莉緒の誕生日がいいと思ったんだよ」
「そんなに焦らなくても…。それに、会社にも言ってないし」
私とは正反対なくらい、瞬爾は結婚に積極的だ。
だけど、こんなに皮肉な事ってあるだろうか。
あんなにプロポーズ前は、瞬爾は結婚の気配すら見せてくれなかった。
その姿にヤキモキしていたのに、実際にプロポーズを受けた後は、私が迷い始めるなんて…。
「会社になら、いつでも言えるんじゃないか?俺は、全然構わないんだよ。莉緒さえ、その気になれば」
その言葉にトゲを感じる。
だからか、素直になれなかった。
「もうしばらくは、内緒にしておいて欲しいの。担当の取引先の事もあるし…」
そう言った私に、瞬爾は何も言わなかった。
遥が言っていた言葉が、脳裏をよぎる。
瞬爾も私を束縛したいと…。
「ねえ、瞬爾。どうして私に、仕事を辞めさせたいの?」