わたしから、プロポーズ
「営業に行ってきま~す!」
仕事を、こんなに楽しいと思うのは初めてかもしれない。
瞬爾とのプライベートは、少しぎこちない。
だから余計に、仕事に身が入った。
課が違うとはいえ、隣の島同士の私たち。
ともすれば、目なんて簡単に合う。
だから、今は瞬爾と目が合わない様に、わざと一課を避ける様に動いている。
「今日は木下部長のところだから、いつも以上に気合いをいれなきゃ」
異動になる部長の後任の人を、紹介される予定になっている。
木下部長と築いた取引先だ。
次の人とウマが合わないからといって、担当変更になってはたまらない。
それでも担当変更ならまだマシで、取引自体が無くなっては話にならないのだ。
鏡でもう一度、メイクとヘアスタイルのチェックをし、ジャケットの衿を正すと、足早に部長の待つ会社へと向かったのだった。
「一体、どんな人なんだろう」
不安と期待が入り混じる中、いつもの様に受付を通る。
そして、いつも通りの応接室へ通されると、深呼吸を一つして部長を待ったのだった。
それから5分後、ノックと同時にドアが開き、部長と共に入ってきた男の人を見て、思わず口を開けた。
それは、私の初恋の人で幼なじみのお兄ちゃん、ヒロくんだったからだ。