わたしから、プロポーズ
――ヒロくん。
諏訪大孝(すわひろたか)。
5歳年上の幼なじみのお兄ちゃんだ。
もう10年以上は会っていない。
元々は、近所に住んでいたヒロくんだったけれど、大学進学を機に一人暮らしを始めた。
そして、実家もその後はお父さんの転勤で引っ越してしまい、当然ヒロくんとも音信不通になっていたのだ。
それまでは、私を妹の様に可愛がってくれ、友達との約束にも連れて行ってくれていただけに、ヒロくんと会えなくなったのが本当に辛かった。
そんなヒロくんは、スポーツ万能で頭も良くて明るくて、私の初恋の人。
その気持ちを伝える事は出来なかったけれど、今でも忘れてはいない思い出の人だ。
目の前のヒロくんは、私の記憶の中より、ずっと大人ぽくなっているけれど、見間違えるはずがない。
くっきりとした二重の目。
そして通った鼻筋に、広い肩幅。
さっぱりと切られた髪型が、ヒロくんの少し派手めなルックスを、爽やかな印象に見せているのも昔と変わらないからだ。
「もしかして、莉緒か?」
ヒロくんも気付いてくれた様で、驚きの顔を向けている。
「もしかして二人は、知り合いなのか!?」
固まる私たちを見て、もっと驚いているのは木下部長だ。
そして、その部長に答えたのは、ヒロくんの方だった。
「はい。彼女は僕の幼なじみなんです」