わたしから、プロポーズ


「変な事?」

遥は途端に真面目な顔つきになると、私をオフィスから連れ出した。

そして、化粧室へと連れて行ったのだった。

すっかりこの場所が、“秘密トーク”のお約束の場所になっている。

「さっきね、伊藤課長から聞かれたのよ。ゆうべ、莉緒とメールでやり取りした内容は仕事の事なのかって」

「えっ!?」

瞬爾が、そんな事を遥に聞いたというのか。

なぜ…?

「その質問が何かを探ってるっていうのは分かったんだけど、どう答えたらいいか分からなくて…」

「ごめんね、遥。何だか迷惑をかけてるみたい」

動揺する私に、遥は心配そうな顔を向けた。

「へたに答えていいものかも分からないし、だいたい私たちメールなんてしていないでしょ?」

これには黙って頷くしかない。

瞬爾は、私のゆうべの言葉を疑っているということか。

「課長と何かあったの?私、メールの事はプライバシーですからって誤魔化したけど、課長は何かを勘繰ってたわよ?」

「ごめん…。ちょっと、ケンカしてて…」

この期に及んでも、まだプロポーズされた事を言えない。

どうして言えないのか、自分の気持ちが分からない。

そして瞬爾は、私の様子がおかしいと確信している。

だったらきっと、今夜も疑うに違いない。

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