わたしから、プロポーズ
結局1時間だけの勉強で、忘れていた単語すら思い出す余裕はなかった。
「ごめんね、ヒロくん。返って足手まといだったかも。ヒロくんは、仕事の為に勉強してるんだよね?」
カフェを出ながら肩を落とす私に、ヒロくんは小さく笑った。
「俺も、莉緒に感化されただけなんだよ。それも10年以上も前に」
「どういう事?」
「中学生の莉緒が、目をキラキラさせて夢を語ってたろ?英語が話せる様になりたいって。それに刺激されて、俺も密かに頑張ってたんだよ」
少し恥ずかしそうに、ヒロくんは、はにかんでいる。
「私も、ヒロくんとの再会で思い出したから。一緒だね」
ようやく笑顔を浮かべられた。
そして、もう一つ思い出した事がある。
私がヒロくんを好きになった理由。
それは、こんな風にお互いがお互いに影響されるところだ。
何気なく言った事やした事が、お互いを影響し合う。
そこに、私はヒロくんへの身近さを感じて恋に落ちたのだった。
それは、今も変わっていない。
「じゃあ次は、莉緒の調子が乗ってる時にしような」
「うん。ありがとう」
ヒロくんの優しい笑顔に、涙が出そうになる。
どうして、瞬爾はメールを返してくれないのだろう。
そんな切なさに駆られた時、携帯にメールが届いて、一気に鼓動が速まった。