わたしから、プロポーズ
さっきまで、違う人といたくせに、胸の高鳴りは瞬爾の方が上だ。
それなのに、どうして突然、結婚に迷いが出始めたのかが分からない。
「そうだったのか。莉緒は、今夜何か用事があったんじゃないのか?もう終わった?」
「あ、うん。終わった」
やっぱり、知っていた。
メールを見ていて、無視をしていたのだ。
仕事をしていたのだから、もしかして見ていなかったのかもという淡い期待は、見事に裏切られてしまった。
といっても、私の身勝手な期待だけれど。
「それなら帰るか」
瞬爾は淡々と片付けをすると、パソコンをシャットダウンした。
「急ぎの仕事だったの?」
「いや。ただ、莉緒が遅いなら、早く帰る意味もないかなと思ってさ」
素っ気なく答える姿に、傷つく自分がいる。
本当に、私はどこまでも身勝手だ。
結婚に迷いを持ちながら、初恋の人とこっそり会い…。
それなのに、瞬爾に冷たい態度を取られると傷ついているのだから。
手際良く電気が消される。
そして、ドアの鍵を掛けた瞬爾は、足早にエレベーターへ向かった。
その後を気まずい思いでついて行くしかない。
こんな風になったのは、きっと私のせいだ。
それは分かるのに、どうすればいいのかが分からない。