わたしから、プロポーズ
エレベーターのボタンを押しかけた瞬爾は、その手を引っ込めた。
「瞬爾?」
どうしたのだろう。
真顔の瞬爾は、ほんの少し間を空けた後、私の方へ顔を向けた。
そして、言ったのだった。
「俺はやっぱり、莉緒が好きなんだ」
「え?」
どちらかと言えば小さな声で、ボーッとしていたら聞き流しそうなくらいだ。
反射的に聞き返した私に瞬爾は近付くと、もう一度「好きなんだ」と言った。
「瞬爾?どうしたの?」
いつもと違う様子が不審に思えるけれど、『好きなんだ』、その言葉に鼓動は速くなる。
「私も、瞬爾が好きだよ?」
そう答えると、次の瞬間には唇が重ねっていた。
強く抱きしめる様に、私の体を引き寄せた瞬爾に、抵抗する事などすっかり忘れていた。
ここは会社なのに…。
だけど、舌を絡ませる様な激しいキスに、そんな事すらどうでも良くなっている。
瞬爾のキスが、どこか苛立ちを抑える為のものだと分かる。
だけど、そんな強引さが、今の私には心地良かった。
やっぱり、瞬爾に拒まれるのは寂しい。
強引なくらいでも、求められるくらいがちょうど良かった。