わたしから、プロポーズ
「お疲れ様でした」
21時。
ようやく、今日の仕事が終わった。
オフィスには、ちらほらとしか人は残っておらず、瞬爾も外出したきり直帰となっている。
帰る場所は同じなのだから、必ず会えるわけだけど…。
「はぁ…」
こんなにも、瞬爾にのめり込む自分が怖いくらいに、頭の中は常に瞬爾でいっぱいだ。
「何時に帰るんだろ」
携帯をチェックするも、メールも入っていない。
もし、結婚さえすれば、こんな寂しい気持ちを味わう必要がないのだろうか。
きっと、そうだ。
いくら同棲をしているとはいっても、瞬爾の気持ちが離れたら終わり。
その不安から解放されたくて、結婚をしたいのだと思う。
「でも、それって普通でしょ?」
みんな思ってる事だよね?
オフィスビルの25階からエレベーターで降りると、そこは高層ビルが建ち並ぶオフィス群。
だから、この時間の人の多さは、昼間以上かもしれない。
スーツや、オフィスカジュアルに身を包んだビジネスパーソンで溢れていた。
その人混みの中に飛び込んで、駅までの道を足早に進んでいた時だった。
「莉緒、待って」
後ろから腕を掴んできたのは、誰よりも会いたい瞬爾だった。