わたしから、プロポーズ


「瞬爾!?もう終わったの?」

こんな人混みの中から、私を見つけてくれたのが嬉しい。

行き交う人たち誰一人として、今の私には空気も一緒。

だって、瞬爾しか見えていないから。

「ああ、ちょうど終わったところでさ。会社に電話したら、莉緒は帰ったって聞いたから」

「会社に?」

それが、終了報告の為だとは分かっているけれど、私の事も聞いてくれたのだと思うと胸がキュンとする。

「ああ。まだいるなら、一緒に帰ろうと思ったんだよ。だけど、良かった。こうやって会えて」

控えめに口角を上げて微笑む瞬爾に、自然と腕を絡ませた。

「うん!一緒に帰ろ。私も、瞬爾終わったかなぁって考えてたの」

なんて幸せなのだろう。

隣にいて、温もりを感じられて。

この時間が限りなく幸せだ。

「ねえ、瞬爾。今夜は簡単な物でよければ、ご飯を作るから」

「ん?疲れてないか?無理しなくていいんだぞ?」

駅までの道のり、瞬爾に目を奪われて顔を緩める女性が多い。

瞬爾は気付いていないみたいだけど、私はしっかり気付いてる。

だから、心配なの。

早く、しっかりとした形が欲しい。

その為なら、どこまでも頑張るから。

「ううん。全然、疲れてないよ。何がいい?」

どんな時でも、笑顔は絶やさない。

いつだって私が、瞬爾の癒しでいたいから。

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