わたしから、プロポーズ


「初めまして。坂下です」

腹が立つけれど、私が美咲さんを瞬爾の元カノだと知っているとは、二人は夢にも思っていないのだ。

だからここは、当たり前の様に挨拶をするしかない。

すると、美咲さんも余裕たっぷりに返してきたのだった。

「こちらこそ初めまして。瞬爾とは、仕事でずっと一緒にやってきてるの。これからもお世話になるつもりなので、莉緒さんもよろしくお願いしますね」

そう言った美咲さんは、瞬爾に「早く行きましょう。みんなが待ってるから」と促したのだった。

瞬爾の腕にそっと触れている。

これではまるで、私が一番他人みたいだ。

「莉緒は?どこの店なんだ?」

歩きかけた瞬爾は足を止め、私に声をかけた。

見捨てられなかった事にホッとする自分がいて、つくづく嫌になる。

本当、私は身勝手だ。

「あ、うん…。この5階なの」

「5階!?じゃあ、俺たちと一緒じゃないか」

「ええ!?一緒?」

まさか、店が同じとは何という偶然。

動揺する私の手を、瞬爾は取ったのだった。

「それなら、一緒に行こう。あそこは、俺たち一課の担当者たちもいるはずだから、挨拶しないとな」

瞬爾ってば、何だか嬉しそう。

まさか、店が一緒だったのが嬉しいとか?

そんな想像した後に、すぐに寿史さんの言葉を思い出したのだった。

身勝手な私を、瞬爾はいつまで受け止めてくれるだのだろう…。

そろそろ、きちんと自分の気持ちに答えを出さないといけない。

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