わたしから、プロポーズ
私と瞬爾の関係が、すっかり広まっている。
木下部長からも、「仕事はどうするんだ?」と聞かれ、答え様がなかった。
「坂下さんが営業に来ると、疲れも吹っ飛んでね。気さくな人柄が大好きなんだよ」
瞬爾にそう語った木下部長は、「今日は本当に来てくれてありがとう」と、私に笑顔を向ける。
そして、あれこれと話を聞いた瞬爾は、「お邪魔になりますので」と、隣の自分たちの輪の中へ向かった。
「よ~し!坂下さんはここだ!」
瞬爾が行った事を確認した部長は、私を座る様に促したけれど、その場所は何と隣の席で、ちょうどヒロくんと挟まれる形になってしまった。
「部長!?さすがに、ここはマズイですよ。私は端にいますので」
自社の方々を差し置いて、私が主役の隣に陣取る訳にはいかない。
だけど部長は豪快に笑うと言ったのだった。
「何を言ってるんだ。坂下さんが、僕のお気に入りだとみんな知ってるんだから。端に座らせるわけにはいかないよ」
すると、若い営業の男性が話に乗ってきた。
「そうですよ。坂下さんが訪問した日の部長は、かなりご機嫌ですからね。隣は坂下さんで決まり!」
そう言われた直後、みんなの笑いが沸き起こる。
私もつられて笑いながら、一つ気付いていた。
結婚をする事で営業から離れなければならなくなる事、それが嫌なのには間違いという事を。
やっぱり、私は今の仕事が好きなのだった。