わたしから、プロポーズ
隣の瞬爾たちも、かなり盛り上がっている様で、何となく目を向けて見ると、美咲さんが瞬爾の腕を掴んで笑っているところだった。
その光景に嫉妬をする自分がいる。
「莉緒が来てくれたお陰で、部長は上機嫌だな。それにしても、大丈夫だったのか?そっちも飲み会だったんだな」
瞬爾たちに目を止めていると、ヒロくんが声をかけてきた。
「あ、うん。大丈夫よ。あっちは急遽決まった飲み会だから」
いけない、いけない。
今夜は、こっちに集中しなくては。
「それならいいんだ。さっきから、ちらほら会話が聞こえてくるけど、莉緒の婚約者の彼、何かお手柄を立てたみたいだな」
「その婚約者ってのやめてよ」
改まって強調されるのは嫌だと思う、この複雑な心境。
これは、今のところ治りそうにない。
すると、ヒロくんは小さく吹き出したのだった。
「何を言ってるんだよ。指輪をしておいて、今さら恥ずかしがるのか?」
「あっ…。こ、これは…」
そう言いながら、思わず薬指を反対の手で隠す。
やっぱり、はめなければ良かったかもしれない。
こういう指摘は、正直恥ずかしい。
「素敵な人じゃないか。本当、完璧な人って感じだな」
「ヒロくんと同じ年齢なんだよ。それにヒロくんだって、素敵な人だもん」
そう言った私に、ヒロくんは黙って笑顔を向けたのだった。