【短編】彼女の秘密と僕の憂鬱
正直、泣かれると思ってなかったので、俺は言葉を失った。
「ごめんね。泣くつもりはなかったんだけど。…はぁー。欲張っちゃだめなんだよね。バチが当たったかな。」
笑いながら言う彼女の頬を伝う涙は、美しかった。
正直、今すぐにでも抱きたいと思った。
でもこのままではお互いのためにならないと思ったから、理性を総動員して正直に、思いを告げた。
それから、彼女とは卒業式と離任式で会ってから、会っていない。
姿を見かけることもない。
俺は大学生になって新たな生活をスタートし、完全にお互いに別々の人生を歩み始めた。
周りの景色が秋めいてきて、街中でタートルネックの女性を見かけると、どうしても彼女のことを思い出してしまう。
最後に会ったときの彼女の涙が、頭をよぎる。
元気にやっているだろうか。
彼女のことだから、きっと誰かそばにいてくれる人がいるだろう。
ふと、会いたくなった。
そして、ちょっと道を外してしまった2人が再び出会うのは、また数年後のお話…
end.