A-YA-KA-SHI☆バスター!!【Ⅱ】
 間違いなく、ここは美樹にとっての現実世界で。
 海岸のほとりには、みんなで過ごした大事な喫茶店『free‐time』が見えていて。
 この砂浜だって今は淋しいが、夏になれば大勢の人達で賑わう。
 そして、ここには、彩がいる。
 リュウもいる。
 アヤカシの世界に帰らずに戦ってくれたアキラとマリも、2人寄り添って、これから目にするだろう光景の凄まじさを、ただじっと見つめる事しか出来ない。
 これから起きる、運命の瞬間を。


「・・・これが、運命・・・」


 美樹は、もう一度、呟いた。



☆  ☆  ☆



「どうして来たんだよ」


 隣に降り立った彩に、リュウは言った。


「さぁね。ここまでデカい気がぶつかり合ったら、もう逃げ場はないんだ。それなら、あたしはあんたのそばにいる」


 リュウは、そう言う彩を見つめた。
 攻撃体制に入っている訳ではなく、彩はただ、そこに立っていた。
 その横顔は怯えているようには見えず、むしろ少しだけ満足そうな表情だった。
 そして、その右手には、ピンクの桜貝をあしらったかんざしが握られていて。


「――・・・分かった」


 リュウはそう言って、実体化を解いたままの左手を、彩の右手に重ねた。


「この世の理を歪め、己の欲望だけに生きる者よ。今度こそ跡形もなく消しさってくれよう」


 アヤカシは、すっと片手を持ち上げて、こっちに向けた。
 リュウも真っ直ぐに、アヤカシに向かって右手を伸ばす。


「リュウ」


 前を向いたまま、彩は言った。


「お前には、あたしがいる。そして美樹もね。だから」


 地鳴りのような轟音と共に、リュウとアヤカシは同時に、最大級の衝撃波を放つ。



“一人じゃないんだよ”



 そんな彩の言葉は、轟音にかき消された。
< 404 / 416 >

この作品をシェア

pagetop