A-YA-KA-SHI☆バスター!!【Ⅱ】
☆  ☆  ☆



 かんざしに触れた手に、うっすらと熱を感じた。
 お互いが放った衝撃波は、この砂浜一帯にはびこっていた低級なアヤカシを一瞬にして全て消し去った。
 身体ごと粉々に吹き飛ばされそうな衝撃に、彩は思わず、顔をしかめた。
 いや、もう、肉体なんてとっくに消し飛ばされているのかも知れない。
 今、自分が生きているのかすら、認識出来ない。
 まっさらなこの世界でただ分かるのは、かんざしの温もりと、その手の先にあるリュウの温もり。



 ――・・・そして。



“彩”



 えっ? と、彩はうっすらと目を開ける。


「悠・・・? 諒?」


 リュウの後ろに確かに感じた、二人の気配。
 その途端、彩の頬に、涙が伝う。
 これほどまでに、欲している。
 生まれた時からずっと一緒だった、二人を。


「もうすぐそっち・・・行けるかな」


 彩は呟いた。
 これほどまでに、魂のレベルで惹かれ合う存在に出会えた事。
 それを運命と言うのなら、彩は、運命に感謝したかった。
 そして、顔を上げる。
 運命の結末を、この目でしっかりと見ておくために。


「彩」


 リュウは、彩に呼びかける。


「ありがとな」


 轟音は激しさを増して、そんなリュウの言葉をかき消した。
 一人じゃない。
 だから、強くなれる。
 確かに、感情の赴くままに行動する人間は愚かかも知れない。
 自分じゃない誰かのために、自らの命を危険に晒して。
 だが、その誰かのためなら、こんなにも強くなれるのだ。
 そんな感情を、アヤカシである自分に感じさせてくれただけでも、リュウは満足だった。


「あいつらが彩と美樹をどれだけ大事にしてたか・・・俺には分かる」


 何故、別の人格が生まれてきたのかは、リュウにも分からない。
 リュウが一度消えたあの時、彩がどんな力を使ったのかも分からないが、結果、悠と諒という存在が生まれ、リュウも完全には消滅しなかった。
 だが、間違いなく悠も諒も、リュウと共存していて。
 共存しているからこそ、その気持ちは、痛いほど伝わってくる。
 リュウは目を見開き、真っ直ぐ前にかざす右手に、ありったけの力を込めた。
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