A-YA-KA-SHI☆バスター!!【Ⅱ】
☆  ☆  ☆




 近所のスーパーならわざわざ車で向かう事もないと海岸線を歩いていたのだが、彩はすぐに後悔した。
 何せ、寒い。
 歩きながらも、無意識に周りの気配を探ったりしている自分がいる事に、彩本人は全く気付いてはいないが。
 上着の襟を立てて、縮こまるようにして歩いていた彩は、ふと、足を止めた。
 気のせいかと思った。


「そんなに下ばかり向いてると、ぶつかるだろ」


 その声に、彩はゆっくりと顔を上げる。
 目の前に立っていたのは。


「・・・諒・・・?」
「何だよ、また気配を読むの、苦手になったのか?」


 からかうようにそう言う諒に、彩は全く動けないでいる。
 諒は苦笑して。


「俺としては、もっと大袈裟なリアクションがあると思ってたんだけどな」
「どうして・・・つか本物?」
「バカ彩。本物に決まってるだろ。帰って来たんだよ」
「悠は?」
「当然、一緒に帰って来た。先に店に行ってる」


 おかしいと思っていた。
 鍋の材料なんてわざわざ買い出しに行かなくても、確か家の冷蔵庫に何かしらあった筈だ。
 それに、今頃気付いたが・・・美樹は、何を買って来るのか言ってない。


「美樹のヤツ・・・やってくれたな」


 驚かそうと思って、美樹が仕掛けたサプライズ。
 もう、驚きすぎて、何のリアクションも取れなかったが。


「もしかして嬉しくねぇのか?」
「びっくりしてんだよ!」


 ったく・・・と、諒は彩に一歩、近付いて。
 その頭を、ぐいっと自分の胸に引き寄せる。


「頑張ったな、彩」


 そんな風に言われ、彩は目を閉じた。
 懐かしい温もりに包まれながら。


「諒」
「・・・ん?」
「鍋の材料四人分になったから・・・買い出し、手伝えよ」


 マジかよ、と、諒は天を仰いだ。
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