絶対日記『REWRITE』
男は回転式の黒く大きいイスをくるりと回転させて、誠を見た。男の名前は三橋。歴史を教えている先生だ。生徒には人気があり、誠とも仲が良い。だが、いつも授業を適当にやっていて、しょっちゅう校長に怒られている。

「あ、なんや…三橋先生か…」

そう言って誠はクルリと背を向け、教室を出ようとする。

「ちょっと待たんかい!何か用なんやろ!」

三橋は慌ててイスから立ち上がり、走り寄って誠の腕をつかんだ。

「だって、三橋先生が進路の相談とかわかるんけ?」

三橋の腕を振りほどこうとする。

「アホかお前、できるっちゅーねん!俺、一応進路担当しとんねん!」

「あ、そうなん?」

「そうや!」

「まぁ、三橋先生でええか」

「『で』って何や、『で』って!」

誠は三橋が座っていたイスに対応する茶色のイスに座った。三橋も戻って、さっきまで座っていたイスに座った。

「ほんで?南原、進路のことやろ?お前、高校卒業したらどうするんや?」

「俺さぁ、大学行こうと思て」

「…え?」

「だ・い・が・く!」

「ハハハハハハ!」

三橋はイスにもたれかかり、大笑いする。

「おい、笑い事ちゃうねん!真剣や!」

「あぁ…すまん、すまん。ほんで、どこの大学や?」

「まだ何も決めてないから、それ聞こうと思て」

「ふーん。お前、本気なんか?」

「冗談やったら、わざわざこんなとこ来ーへんよ」

真剣な顔で三橋を見つめる誠。その様子に三橋は腕を組み、少し顔をしかめた。
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