イジワル同期の恋の手ほどき
ちょうど2か月前のまだ暑い日。
「泉田さんのこと、好きなんだろ」
いつものようにふたりで飲んでいた時、何気ないふうに宇佐原に聞かれて、内心慌てているのを押し隠す。
「何、言ってるの。違うわよ」
慌ててグラスを傾けると、そんな私をちらりと見た後、宇佐原は私の目を見つめてくる。
「グラス空だな、次なに飲む?」
ばつが悪くて、こっそり空のグラスをテーブルに戻すと、にやっと笑った宇佐原からドリンクメニューを手渡された。
店員にオーダーして、グラスの氷をカランカランと鳴らしながら、宇佐原は再び目をじっと見つめてくる。
宇佐原には目力があると思う、その切れ長の大きな目でじっと見られると、どぎまぎしてしまう。
たとえ恋愛感情を抱いていなくても。
とくにお酒が入ると妙な色気も加わり、時々、ぼーっと見とれてしまうことがあるのだ。
「で、さっきの答えは?」
「だから、違うってば。泉田さんは憧れの先輩で、それだけだから」
「ふーん」
宇佐原に見据えられた私は、いたたまれなくなって思わず視線を逸らしてしまう。
「相変わらず、嘘つけないよな、おまえ」
上目遣いに宇佐原がそう言って笑うから、ますます挙動不審になる。
「いいかげん、認めたら? そんな真っ赤な顔して、潤んだ瞳で違うって言い張られても、信じられないんだけど」
宇佐原の追及は止まることを知らない。
「もう、うるさいな、認めたらいいんでしょ」
とうとう観念して、手で顔を覆ったまま、つい告白してしまったのだった。