イジワル同期の恋の手ほどき


いつも女性社員の噂の的になる泉田さんだけど、特定のお付き合いをしている女性は、今のところいないらしい。
これまでアプローチした女性社員は数知れず。
泉田さんのハートを射止めるのは、どんな女性なんだろう?

『今は、仕事に集中したいから』

これが有名な断り文句。スマートすぎる。
恋愛にガツガツしていなくて、浮いた噂のひとつも聞こえてこないところが、ますます人気を高めている理由かもしれない。

泉田さんのことを私は密かに〝光の君〟と呼んでいる。
すらりとした長身の優男で、色白の整った上品な顔立ちは平安時代の貴族の雅なイメージと重なる。
すれ違った時にいつもほのかに香るのは、香水でも整髪料でもなく、とても上品な香り。
源氏の君がもし現代に生きていたら、きっとこんな感じなんじゃないかと思う。

宇佐原との外回りのとき、なんで泉田さんに好意を持っていることがわかったのかと聞いたら、あきれたように返された。

『隠せてるとでも思ってるのか? 隠すどころか、だだ漏れだ』

『私、そんなにわかりやすい?』

『ああ、泉田さんと話してる時、いつも目がハートになってる』

そう言われた時は、顔から火が出るかと思った。

『ほらな、そうやって、すぐ赤くなるだろ』

宇佐原にはなぜかいつも嘘がつけない。
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