イジワル同期の恋の手ほどき

 * * *


一日中、美緒のことばかりを気にして、心ここにあらずの俺は、なんとか業務をこなす。
十六時から始まった会議が長引いて、急いでオフィスに戻ってみると、美緒の姿はすでになかった。
キョロキョロと探していると、藍田が血相を変えて駆け寄ってきて衝撃の事実を伝える。

「美緒が泉田さんに連れ去られた」

「どういうことだ」

顔が一気にこわばる。

「会社の入口で、二人が歩いているところ、見たって」

慌てて荷物を片付けていると、女性社員のひそひそ話が聞こえてくる。

「とうとう、木津さん捕まっちゃったか」

その動向が女性社員たちに逐一チェックされるほど、泉田さんは注目されている存在なのだ。

美緒だけが気づいていないが、泉田さんは結構な遊び人で、決まった相手を作らないのは、自由に遊べるようにという、もっぱらの噂だ。
そして、美緒の好意にももちろん気づいている。

スマホを握りしめ、美緒をコールする。
お願いだから、出てくれ。
祈るような気持ちで、駅までの道を走りながら、ずっとコールを続けた。
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