イジワル同期の恋の手ほどき

これはきっと泉田さんと近づける最大のチャンス。
だけど、この手を取って本当にいいの?

美しすぎる泉田さんの顔をじっと見ていると、突然、宇佐原が目の前に現れて、ますます混乱する。

「帰るぞ」

泉田さんの手を振り払い、私の鞄を肩にかけると、宇佐原が有無を言わさず連れ出す。

「あの、宇佐原」

「こいつに話があるんで、ちょっと借りていきます」

泉田さんにそう告げると、宇佐原は息を切らせたまま、私の手を引っ張って、店を出る。
いつの間にかしっかりとつながれた手を引かれるままに、小走りに歩く。

宇佐原はさっきからずっと無言だ。
ちらちらと視線を送っても、こっちを見てくれもしない。
相当怒らせてしまったみたいだ、なんて言って謝れば許してもらえるのだろうか。
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