イジワル同期の恋の手ほどき
§ 最高のプレゼント §
お腹もふくれ、食後のケーキタイム。
ホールケーキは余ってしまうからと宇佐原が言って、それぞれに好きなカットケーキを選んだ。私はベークドチーズケーキ、チョコレート好きの宇佐原はザッハトルテだ。
「今日はコーヒーでいいか?」
「うん」
宇佐原家のコーヒーはペーパードリップ式。
一人暮らしの男性なのに、本当にマメだ。
「宇佐原って、なんでいつも私の飲みたいものがわかるの?」
「はっ?」
「今もね、コーヒーの気分だったし、これまではずしたことないんだよね」
「そうか? 自分が飲みたい物、選んでるだけだけどな」
「てことは、私たちの相性がばっちりってことよね」
宇佐原みたいになんでもわかりあえる友達はほかにいないなと考えていると、宇佐原が驚いたように振り向く。
「あっ、えっと、飲み物の相性が」
慌てて付け加える。
「ああ、そうかもな」
「居酒屋で頼みたい物も一緒なんだよね。だから、宇佐原と行く時は全部お任せでも、ちゃんと食べたい物が出てくるんだ。だから、すっごく便利」
シャンパンに少し酔って、冗舌になっていた。
コーヒーが入り、ケーキを食べながら宇佐原が言った。
「今日はありがとうな、一緒に祝ってくれて。今までで、一番幸せな誕生日だったよ」
宇佐原の瞳にろうそくの灯が写ってキラキラと輝いている。
「大げさだな、きっとこれからもっと素敵な誕生日があるよ」
そう言いながら、あの総務課のかわいい女性社員の顔を思い浮かべていた。
「そう言えば、私とで良かったの?」
「何がだ?」
「誕生日は恋人と過ごすものじゃないのかなって、思って」
「そんな奴、いないって知ってるだろ」
宇佐原が笑いながら言う。
今日こそ、宇佐原の好きな人を聞きだしたい。
「でも、好きな人はいるのよね。その人を誘えばよかったのに」
そう言った途端、宇佐原から笑顔が消える。
「来年はそうするよ。おまえもこれでばっちりだな、パーティの練習もできたし。いつでも泉田さん誘えるんじゃないの?」
宇佐原の言葉はどこか投げやりに聞こえた。
「うん」
無理やり笑顔を作ってそう答えながら、かすかな寂しさを感じていた。
もう、こうやって、宇佐原に料理を評価してもらうこともなくなるんだ。
そんなことを思うと、妙にしんみりしてしまう。
「そうだ、今日の料理は何点? もちろん百点でしょ?」
「うーん、そうだな。九十八点」
「ええーっ」
思いもよらず、百点を取れなかったことが悔しくて、つい詰問口調で言ってしまう。
「ねえ、なんで、あとの二点はどうやったらもらえるのよ」
「百点は次のパーティーに置いとくよ。次はクリスマスだな。それまでに、百点取れる、料理考えればいいだろ」
もしかして、宇佐原はこうやっていつまでも合格点をくれずに、永遠に料理を作らせるつもりなの?
そんなことを考えているときだった。