イジワル同期の恋の手ほどき

「そうは言ってない。泊まっていけば、いいだろ」

「へ……?」

宇佐原の言っている意味がわからず、ぽかんとしていた。
宇佐原、何言ってるの?

「今晩泊まって、明日の朝、作ればいいだろ」

「泊まるって、ここに?」

思わず、大きな声で聞き返す。

「そうだよ」

宇佐原は平然と言った。

「そんな、急に言われても」

頭の中は、グルグルとまとまらない考えが、うずまいていた。

「どうした?」

宇佐原は、まったくいつもと変わらないトーンで聞く。

「着替えとか、いろいろ。何も持ってきてないし……」

なんとか、断る理由を連ねてみた。

「それも、そうだな」

宇佐原がやけに素直に答えるので、拍子抜けした。
やっと、おかしなことを提案していることに、気づいてくれたのだ。
そう思ったのも、束の間。


続く宇佐原の言葉は、私の想像をはるかに越えていた。

「よし、今から買いに行こう」

「ええっ?」

「あそこのスーパー、まだ開いてるから」

「え……」
< 66 / 93 >

この作品をシェア

pagetop