イジワル同期の恋の手ほどき

そして今、歩いて五分のところにあるスーパーの衣料品売場を、宇佐原とふたりで歩いている。
何で、こんな展開になったんだっけ?
さっきから頭の中でまとまらない考えが渦巻いている。

「下着はこのへんだから、適当に見といて」

しばらくして、宇佐原が戻ってきた。

「これ、どうだ?」

そう言って、差し出したのは小花模様のブラウスだった。

「こういうの、好きだろ? 明日の着替えな」

「うん、ありがと」

ブラウスを受け取りながら、さらにさらに混乱した。

「シャンプーは、なに使ってる? ついでに、買っていこう」

知らないスーパーで勝手のわからない私を、宇佐原はてきぱきと必要な売り場に連れていく。

「一回だけだから、宇佐原の借りるよ」

「男もんは刺激強いから、髪の毛傷むぞ。それにいいのか? いかにも朝帰りですって、周りにアピールしてるみたいだ」

にやりと笑いながら宇佐原が言う。
宇佐原がそんなことを気遣うなんて、ちょっと意外。
ぼんやりと混乱した頭で、そんなとりとめないことを考えていた。

「もったいないから、旅行用の少量パックにする」

「この際だから、ボトル買っとけ。うちに置いといてやるから」

「うん」

そう言いながらも内心、宇佐原んちにシャンプー置いてもらっても、あまり意味ないと思うんだけど、と考える。

「歯ブラシやタオルは、買い置きがあるから。あとは朝飯だな」

やけに張り切っている宇佐原に、完全に引っ張られていた。
なんか、おかしくない?

その後、食料品売り場で、卵とベーコンと牛乳を買って、宇佐原の部屋に戻った。

朝食を作る話から、なんでこうなったんだっけ。
着替えや化粧品があれば泊まってもいいって言ったんだっけ?
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