イジワル同期の恋の手ほどき
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宇佐原亮介との出会いは七年前に遡る。
私たちの勤める会社、『株式会社サトナカ製作所』は、家具のプロデュースからデザイン、製作までを行う会社。
家具といっても美術館や博物館の展示ケース、劇場やホールの椅子から小学校の机や椅子に至るまで、取り扱う製品は幅広い。
日本の伝統工芸を取り入れた製品も多く手がけていて、海外向けのブランドも展開しているため、世界でも名を知られるメーカーである。
海外に支店も多く、世界中に私たちが作る家具の愛好家がいる。
どんな形でもいいから、文化に関わる仕事がしたいと思っていた私は、今の会社に入り、宇佐原と出会った。
新人研修で着慣れないスーツに身を包んで神妙な面持ちで座っていると、隣の席から私の名札を覗きこまれ、日に焼けた大きな右手を差し出された。
「木津美緒(きづみお)さん? 俺、宇佐原亮介。同期はふたりだけみたいだから、今日からよろしくな」
初対面で握手?
私は一瞬ためらった。
でも、宇佐原の人なつっこい笑顔とさわやかなたたずまいに、人見知りだった私の警戒心もすぐ解けて、笑顔で手を差し出していた。
出会ったその日に飲みに誘われ、連絡先を交換し、それからは定期的に飲みに行っている。
宇佐原とは初めから気が合った。
お互いの仕事の話もするし、プライベートでの楽しかったことも嫌なことも、なんでも本音で話せる貴重な男友達。
かれこれ七年近く、そんな腐れ縁が続いている。