イジワル同期の恋の手ほどき
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翌朝、頬になにかが触れるのを感じて、目を開けると、すぐ目の前に宇佐原の顔が迫っていて、心臓が早鐘を打つ。
宇佐原は優しく微笑んで、頬をなでながら、「おはよう」と言った。
「あれ……?」
「ここは俺の部屋」
それを聞いて、昨夜の記憶が一気によみがえる。
「寝ぼけた顔もかわいいな。昨日は色っぽかったけどな」
宇佐原が頬に軽くキスを落とす。
きっと今、顔が真っ赤だ。
「ゆっくり寝かせてやりたいけど、そろそろ起きた方がいい。シャワー浴びたら、すっきりするぞ」
慌てて枕元の時計を見ると、六時半を指していた。
立ち上がろうとして、思わずよろめいた。
「おい、大丈夫か?」
宇佐原が笑いながら支えてくれた。
「ちょっと、刺激が強すぎたかな? 初心者には」
「初心者って、なによ! 私だって、経験くらいあるもの」
宇佐原がクククと笑いだす。
「バレてないとでも、思ってるのか?」
「男の人と、つ、付き合ったことくらい、あるもの」
「いつだ? 高校生の時か? ん?」
「バカにしてるんでしょ」
下を向いて、唇をかむ。
「ちょっと待て、誰がそんなこと言った?」
宇佐原が腕を引いて振り向かせる。
「感動してる。めちゃくちゃ、うれしかった。言っただろ、俺は一から教える方が好きだって。最高のバースデープレゼントだったよ」
そんなふうに言われると、言葉が出ない。
「なあ、これからも、俺だけにしてくれ。俺の物だって、言っていいんだよな?」
そう確認されて、ふと思い出す。
「あの……好きな人のことは、もう良かったの?」
「あのなあ」
宇佐原は大きなため息をついた。
「あんなに真心込めて、思い伝えたのに、まだわからないのか? そんなの、おまえのことに決まってるだろ」
「なあんだ」
思わず、脱力する。
「ずっともやもやしてたのに、気にして損したよ」
「気にしてたのか?」
「そりゃ気にするよ」
「なあ、それって俺が好きだからだよな」
宇佐原がじっと見つめる。
「それは……」
「まだ、ちゃんと聞いてないんだけど、おまえの気持ち」
「そんなの、言わなくてもわかるでしょ」
「いや、わからない。ちゃんと言って」
にやにやして待っている、宇佐原は意地悪だ。
「す……き……に、決まってるじゃない……」
そう答えた途端、ぎゅっと抱きしめられた。
「やっと聞けた。俺も、好きだ。出会ったときからずっと、いつだって、おまえは俺の中では女だったよ」
そのまま、キスが始まって、どんどん深くなり、体を離したときには、二人とも呼吸が乱れていた。