イジワル同期の恋の手ほどき
目を白黒させて、挙動不審になっていると、ハハハハと豪快に笑った宇佐原が、ふんわりと抱きしめる。
「冗談だよ。練習なんか、しなくていい。今のままで十分、美緒にまいってるから」
そんな台詞がダイレクトに耳に注ぎ込まれて、ますます真っ赤になる。
「おまえが赤くなるの、顔だけじゃないんだな」
意味がわからず、首をかしげる。
「きれいだったな、白い肌が色づくの。今も目に焼き付いてる。これからは、その赤い顔見るたびに首から下も想像しそう」
「スケベ、な、何言ってるのよ」
そう言ってますます赤くなるのを見て、宇佐原がにやにやとあきらかにいやらしい目つきで見るので、その目を隠そうとする。
「もう、やめてよ」
「美緒、これからも晩飯と朝飯、毎日作ってほしい。だから、ここに来ないか」
「えっ、それどういうこと?」
「今日から、ふたりで暮らそう」
なんだか、展開が早すぎてついていけない。
「もう、片時も離れていたくないんだ。七年も待ったんだぞ。せっかくシャンプーもボトルで買ったのに、使わないまま置いておくのか」
「いや、もったいないから使う」
また宇佐原にのせられて、つい答えていた。
だから、わざとボトルを買ったの?
やっぱり宇佐原は策士だ。
「そうそう、どれにする? おまえのデスクも買わないとなって思って、昨日選んでおいた」
そう言って宇佐原が持ってきたのは、テーブルの上に置いてあった会社のカタログと家具の配置を書いた間取り図。
「えっ、待って、宇佐原、このレイアウトって、この部屋のだったの?」
宇佐原はどこまで用意周到なのだろう。
「ああそうだよ。家で仕事するのに、デスクないと不便だろ? ほかにも必要な家具あったら追加していいぞ」
そういうことじゃなくて。
宇佐原はいったいいつから確信していたのだろう、私がうんと言うことを。
「だから宇佐原。ちょっと私、まだついていけてないんだけど」
「なあ、いいかげん、宇佐原って呼ぶのやめろよ。亮介って呼べって、昨日もさんざん言っただろ?」
「ごめん。りょ……りょ……。やっぱり、無理」
くるりと背中を向けると、宇佐原が背中から抱きしめてくる。
「ダメだ。今度から、宇佐原って呼んだら、罰金な」
そう言って、頬っぺたをすり寄せるのがくすぐったくて、逃れようとするのにぎゅっと閉じ込めたまま、離してくれない。
「うう」