イジワル同期の恋の手ほどき
私はそっとため息をつく。
「私、やっぱり光の君みたいな、風流な人が良かったな」
「はっ、おまえまだ気づいてないのか、泉田さんは相当な遊び人だぞ」
「何言ってるのよ、そんなわけないでしょ」
「あのなあ、おまえが憧れてるから黙っていたけど、専門分野は、〝後腐れのない恋愛〟だ」
「ひがまなくても」
「おまえ、もう少しでその一人にされるところだったんだぞ」
あまりにおかしくて、けらけらと笑っていた。
「うそだぁ、私なんて相手にされてなかったよ」
「ほんと、男見る目ないよな」
「でも、その男の中に、亮介も含まれるわけよね?」
「いや、俺はほら、別格だから」
「よく言うわ、亮介こそ、真の光の君よね」
「それは、見目麗しくスマートな知識人で、女性を喜ばせるのが上手で、恋愛にたけているというほめ言葉か?」
「違う。平安時代の粋っていういう意味の〝色好み〟じゃなく、現代用語の〝色好み〟ってこと」
「上等だ」
宇佐原に捕まえられる前に、するりとベッドから抜け出す。
「最近、食べすぎだから、今日は一日、デトックスのために断食してみたら?」
「できるわけないだろ、一度食べたら忘れられない味なんだから」
いつも、どんな時でも自信たっぷりで、えらそうな〝俺様〟宇佐原亮介のたった一つの弱点は、不意打ち。
「宇佐原亮介が認めた五つ星レストランだから当然よね。お客様をあっと驚かす、新しいメニュー開発するから、今晩の夜食、お楽しみにね」
ぽかんとした後、宇佐原があのくしゃっとした、私の大好きな笑顔で笑った。