欲しいのに悲しくて
「菜子?」
それでも、最後の悪あがきとばかりに、顔を反らしてみる。
「んっ……!!」
だけど、やっぱりそんなものは何の意味も為さなくて、顎を掴まれたと気付くと同時位に唇を塞がれてた。
「こら、逃げるな」
ちっとも怒ってないような言い方と優しい声色に胸がきゅんとなる。
すぐ離れてしまった唇がなんだか寂しい。
あれだけ恥ずかしいからと逃げたはずなのに。
「足りないって顔してるね?」
「えっ!私、声に…っ…あ!」
思ってる事を言い当てられたみたいで、声に出てたのかって慌てたけど、それを言ってしまったらそう思ってる事を肯定した事になっちゃう…!
そう思って慌てて口を両手で塞いだ。
…もう遅かったみたいだけど。
だって、彼が思い切り笑いを堪えたような顔してる。