欲しいのに悲しくて
「笑いたければ笑えば良いじゃないですかっ…!」
「ふっ…何で敬語?」
仕事以外ではいらないっていうから、普段は使わないけれど、まだ馴れないからか時々出てしまう敬語。
でも、普段はこんな反抗的な言い方はしないから、それをバカにされたようで、私は益々むくれる。
「あー…ごめんごめん。機嫌治してよ」
「まだ笑ってる癖にっ…!」
恥ずかしいやら彼の余裕ぶりがムカつくやら。
さっきまでの甘い空気はなんだったの!?
「えっ…?きゃあっ……!」
そんな事を思ってたら、急に景色が反転して、一瞬何が起こったか分からなかった。
次の瞬間に目に入ったのは、笑顔だけど、さっきのからかうような雰囲気とは違う彼の顔で、
「ごめん、あまりに可愛かったから」
そんな、言われたら言葉に詰まっちゃうような言葉を言われた次の瞬間には、また唇が塞がれてた。
「ふぁ……っ」
さっきよりも長くて、息をする隙間も殆ど与えないようにどんどん深くなるキス。
「機嫌、治った?」
そんな風に聞かれたけど、答える余裕なんてなくて、もっと言えば、答える隙なんて与えてくれなくて。
また唇を塞ぎながらも、器用に服を脱がされて、考えなければ良いのに『馴れてる』なんて考えてしまって、苦しくなって、それを誤魔化す為に彼に強く抱きついた。