滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「っていうかさ!来るなら来るって前もって連絡してよね!!」
たくさんの人間で行き交う東京駅。
空気が冷たく吐く息が目の前で白く姿を見せる。
「そんな怒らなくてもいいじゃない〜」
ふふふと他人事みたいな口ぶりで話すのは、実の母親だ。
バックと紙袋一つ持って、
何の連絡もせず行き当たりばったりで福島から東京にやってくるなんて。
「ねぇ、母さんアソコ行きたいのよ。アソコ」
「へ?」
「あの〜…、すか、スカ…なんとかってやつよ」
「スカイツリー?」
「そうそう!」
東北訛りに懐かしさを感じながら、私達は歩きながら駅を出る。
「あんらぁ〜、都会ってやっぱりビルがいっぱいあるのねぇ」
堂々とそびえ立つ高層ビルを見上げながら驚く母親。