滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

…空はあっという間に日が落ちてまだ夕方五時前なのに、暗い闇の帳が落ちてきた。





「じゃ、気をつけてね」

「奈緒子も体に気をつけてね?あまり無理はダメよ」




駅のホームで停車する新幹線の前で母娘が向かい合う。



「その、さっき話したことだけど深くは考えなくていいからね。奈緒子がよかったら、の話だから」




苦笑いしながら言った母親にうん。とそっと笑いかける。



だが、本心は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


すぐに答えが出せないのは、
自分の中で考えがちゃんと決まってなくて気持ちも定まっていない。



きっと母親からしたら安心できる私の言葉を待っていたんだろうけど…。





「お父さんにもよろしくね」


名残惜しむように新幹線へ乗り込んだ母親に最後の声をかける。



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