滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
『あ、奈緒子さん?俺だよ、俺』
「…部長!」
一瞬誰だがわからなくて、新手のオレオレ詐欺?と錯覚したが、
頭の中で声と顔が一致するやいなや思わず声を上げてしまった私。
まさか彼から電話がくるなんて想像もつかなかったせいか、
心臓が小さくドキドキと小刻みし始めてきた。
『あのさ、この前見せてもらったデザイン部の決定イメージ図の紙出してないでしょ?』
「えっ!嘘、いや、でも確か…!!」
彼に指摘され、携帯をその場に置いたまま、
慌てて仕事の鞄の中からプレゼン資料を取り出す。
そして一枚一枚確認していくと、
彼の言うとおり提出するはずの紙が手元にあった。
「…すみません…ありました」
『やっぱね』