滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
さっきまでのドキドキはいずこに。
電話を切った後も、
大事な社長へのプレゼンが水の泡になってしまうんじゃないかという不安が襲ってくる。
彼があんなに怒るのも初めて見たから尚更かもしれない。
「ってこうしてる場合じゃないっ!明日の為に早く寝なきゃ!」
さっきまでの物思いに更けていたとは思えないぐらい、慌ただしく動き始めた私。
家に帰ったらゆっくり食べようと思っていた実家の和菓子も忘れてしまうほど、
頭の中は仕事の事でいっぱいになっていた。
ーー見合いの話は…、
ひとまず仕事が一段落してから考えても遅くないよね。
そうやって私は自分の都合のいいように言い訳をして、
目線をそらしていた。