滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「ーー!?」
その時、いきなり背後からグイッと腕を持ち上げられ、
私は促されるまま慌てて立ち上がり、恐る恐る振り返った。
そこには口をへの字にしてムッとした表情で見下ろす彼がいた。
「ぶ、部長…あ、あの…」
「随分いい御身分ですねぇ、夏目さん」
片眉をひょこっと上げてニヤリと笑う笑顔は、どう見ても只事ではないと感じる。
ーー相当怒って…るよね?
返す言葉すら出ない私は冷や汗を垂らしながら、ははは…と苦笑いする。
そんな私を見かねた彼がはぁ〜と深い溜息をついた。
その瞬間ーーーー!
バサバサッと足元に落ちる資料達。
彼は私の体を強引に胸元へ抱き寄せて、
そのまま強く抱きしめながらそっと呟く。
「…連絡もないし、携帯にかけても出ないし…。心配したんだからね、んとに」
ギュッと抱きしめてくる腕の力が痛いぐらい強い。