滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

たしかにルックスも顔立ちも悪くないし、誰に対しても優しく接してて仕事もできる。





まるでずっと前からいるような風格すら漂わせて、

つい最近やってきたような雰囲気すら感じさせない。




あまりにも今の立ち位置と周りに溶け込み過ぎて、アメリカで会ったときの思い出は遠い昔の出来事のような感覚にさえなる。





でも…。


「部長ってほんとかっこいいし、仕事出来ますよね〜」

「そんなことないですよ」

「だってまだ二十歳なのに、部長になれるなんて相当実力ある人じゃないと無理ですよっ」

「部長になったのは上からの指示ですから」

「「謙虚〜っっ」」





彼を囲む女子達が楽しそうにきゃっきゃと騒いでいる。



もちろん、彼がこの職場に現れたのも、
部長の席に座っている本当の理由など、知るはずがないだろう。





“アンタに会うために”






まるで漫画や小説のような話。


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