滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
内心そう言われて、嫌な気分はしなかった。
彼を忘れていたわけじゃなかったし逆にそこまで私の事を思ってくれていたんだって嬉しかった。
でも…。
「真壁部長は彼女いるんですか〜?」
「いないですよ」
「年上の女性は好きですかぁ?」
「魅力的じゃないですかね」
ニコニコと楽しそうに話す彼と、
まんざらでもなさそうな女性達を見ていると、こう胸の中がジリジリと……。
「誰か飲みもん頼むやついる〜?」
「ーービールっ!ジョッキでっっ!!」
同僚がメニュー表を見ながら周りに声かけていた時、私は手をピンッと伸ばして一番に声を上げた。
「お!夏目が要約エンジンかかってきたな〜」
はははと周りが一気に盛り上がる。
「おい、大丈夫か!?お前酒弱いだろ…?」
隣の俊介が驚いた表情で私へボソリと小さく呟いてくる。
だが頼んだ以上引き下がれなくなった私は、
不安ながらも大丈夫と答えるしかなかった。