滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
それから数十分後。
「う…っ」
蛇口からジャーと勢いよく流れる水。
そして洗面台に両手をついたまま前のめりに寄りかかる私。
あれからバカみたいにジョッキを飲み干し。
案の定あっという間に酔いが回った私はすぐに気分が悪くなりここに駆け込んだ。
ーー何やってんだ、私。
はぁ…とため息ついた自分の顔が目の前の鏡に痛々しく写る。
連日の忙しさのせいか、目の下のクマが化粧をしても若干浮き出てて、
近頃美容院にも行ってない髪は伸ばしっぱなしだ。
ネイルケアも忘れてるままだし、
運動不足を解消するためにと自ら始めたウォーキングもサボったままだっけ。
「…自分磨きしてないなぁ」
俊介と付き合ってる頃は頻繁に自分自身に対して努力してきたけど、
今は何かと“忙しいから”と理由をつけて休みがちになってる気がする。